イントロダクション

葛藤、断絶、
そして58年ぶりの劇的な再会…

熊本県で訪問介護の仕事をしている林恵子、67歳。子どもたちはすでに独立。休日は友人らとカラオケや居酒屋に通い、一見平穏な日常を送っている。
しかし恵子には、家族や親しい友人にも語ってこなかった、ある秘密があった。それは実の姉が北朝鮮にいるということ。20歳上の姉、愛子は1960年に在日朝鮮人の夫とともに北朝鮮に渡っていった。渡航後、手紙で伝えられる姉の変貌ぶりに、恵子はやがて落胆し、反発。そして絶縁する。その後、日朝関係は悪化し、互いに音信不通の状態に。58年の歳月が流れていった。

そんなある時、姉の消息が知らされる。人生の残り時間が少なくなる中、姉への思いが再び頭をもたげ始めた恵子。「拉致されたらどうするんだ」という子どもたちの反対を押し切り、恵子は訪朝を決意。人生初めての海外旅行が北朝鮮となった。
“謎の隣国”で目にする未知の世界。それはその後の恵子の人生をも変えていく…。
半世紀以上にわたり、政治や時代に翻弄されてきた家族たちの姿を描く異色のドキュメンタリー作品。

帰国事業とは

1959年から1984年にかけて行われた在日朝鮮人とその家族による北朝鮮への集団的な移住。日朝両政府のそれぞれの思惑から始められ、当時の日本中のメディアも北朝鮮を「地上の楽園」と持ち上げ、後押しした。
9万3千人以上が参加したが、そのほとんどが実際は、朝鮮半島南部、現在の韓国の出身者だった。国民的な熱狂の中、送り出された「帰国者」の中には日本人の妻、約1,800人が含まれていた(子どもを含めると日本国籍保持者は約6,600人)。「3年経てば里帰りできる」。当時流布されていたその言葉を信じ、未知の国に渡った日本人女性たち。しかしその後、日朝政府間の対立が続き、彼女たちの消息はほとんどわかっていない。

予告編

コメント

パラレルワールドのような北朝鮮の不思議さに驚かされ、
タイムトラベルのよう な姉妹の再会に胸を突かれる。
こんなSFっぽい社会派ドキュメンタリーは見たことない。

高野 秀行
ノンフィクション作家

50年以上前に妹に結ってやった三つ編み……。
国同士の思惑の前には、無力感も漂う。
ただ、その光景を前に、「自己責任」という言葉を選ばない優しさぐらいは持っていたい。

赤江 珠緒
フリーアナウンサー

それぞれの人生がある、という当然のことを知った。
それぞれの人生が取り残されている、という知られていない事実を知った。

武田 砂鉄
ライター

愛する人と築き上げるホームが持ちたかった。そんな誰だって思い描く夢。
でも誰も、それまでのホームを失うことなんて想像はしないはず。
「はしたない姉より」そんな言葉で何通もの手紙をとじていたけれど、
新しい土地で凛と生きてきたお姉さんを心から尊敬する。
生きていてくれてありがとう。

伊藤 詩織
映像ジャーナリスト

過去は決して断絶などしていない。
忘れ去られた存在である北朝鮮帰国者の日本人妻たちは、今も私たちと同じ時間に生きている。
彼女らの何気ない仕種や表情。それらが心に鋭く食いこんでくるのは、無自覚に歴史を切りすててきた私たちの意識の正当性をつよくゆさぶるからだろう。

角幡 唯介
作家・探検家

今、「自己責任」という言葉が「自業自得」と同義で使われていないだろうか。もっと、血の通った人間の話をしよう。この映画を通して。

安田 菜津紀
NPO法人Dialogue for People副代表
/フォトジャーナリスト

「あの国」への憎悪の原点を考えるために———
「あんな連中、帰ってくれた方がありがたい」。右も左もなく国策として遂行された「あの国」への帰国事業は一体何だったのか。運命に翻弄された日本人女性のその顔には深い皺が刻まれていた。家族の再会を阻む国と国との敵対関係を超えるヒューマニズムの視点を、僕らはいつから放りだしたのだろうか。

金平 茂紀
ジャーナリスト/TVキャスター

「人間は歳をとっても明日を信じ、死ぬまで明るく生きるのよ」———
こう語る中本愛子さん。その凛とした愛子さんの生き様と人生の厚みが深く刻まれた、皺が美しい。朝鮮の大切な家族を守りながら、日本の家族に伝えきれない思いを心に秘め、北朝鮮で強く生きてきた60年。日朝間の複雑な歴史に翻弄され、半世紀以上交わることのなかった姉妹の人生と記憶が、ようやく紡ぎ合っていく。

林 典子
写真家

誰にも相談できず、すべては身内の恥として隠され続けてきた家族の歴史。しかし、これは拉致問題の影で日本政府が放置してきた日本人の人権問題であり、日朝間の人道問題なのだ。死ぬ前に「1泊、いえ2時間でいいから」という墓参の願いが切ない。日朝にまたがる肉親たち。いまだ語られぬ58年の日々。恵子さんの静かな勇気にエールを送りたい。

神谷 丹路
翻訳家、日朝・日韓史研究者

(敬称略・順不同)

スタッフ

撮影・監督・プロデューサー/島田 陽磨

撮影・監督・プロデューサー 島田 陽磨

1975年埼玉県生まれ。早稲田大学教育学部生物学専修卒。同大探検部在籍時にペルーのアマゾン河で起きた部員殺害事件の足跡調査を行った際、取材を受けたことをきっかけに日本電波ニュース社に入社。テレビディレクターとして2003年のイラク戦争でのレポートなど国内外の報道のほか、NHKなどのドキュメンタリー作品を数多く手掛ける。「二つの戦争・翻弄された日本兵と家族たち」(2015年朝日放送)で坂田記念ジャーナリズム賞。「ベトナム戦争 40年目の真実」(同)でニューヨークフェスティバル ワールドベストテレビ&フィルム入賞。ほかに「時代を超える技」(2007年Science Channel)で US International Film and Video Festival 優秀賞受賞など。現在、福島での遅発性PTSDをテーマにしたドキュメンタリー映画を製作中(文化庁芸術振興基金)。

企画協力・撮影/伊藤 孝司

企画協力・撮影 伊藤 孝司

1952年、長野県生まれ。日本写真家協会会員。日本ジャーナリスト会議会員。アジア太平洋戦争で日本によって被害を受けたアジアの人々、日本がかかわるアジアでの大規模な環境破壊を取材し、雑誌・テレビなどで発表している。また、日韓・日朝関係に関する取材にも力を入れ、訪朝取材は40回におよぶ。『ヒロシマ・ピョンヤン 棄てられた被爆者』『無窮花(ムグンファ)の哀しみ―「証言」性奴隷にされた韓国・朝鮮人女性たち』『朝鮮民主主義人民共和国 米国との対決と核・ミサイル開発の理由』など著書多数。最新刊は『ドキュメント 朝鮮で見た〈日本〉 知られざる隣国との絆』(岩波書店)。

撮影(2018年冬季撮影) 利満 正三

1970年兵庫県生まれ。京都大学工学部卒業後、朝日放送入社。報道カメラマンとして、関西を拠点に、ヨーロッパ、中東を中心に20を越える国と地域を取材(4度の訪朝取材含む)。その間、ドキュメンタリー番組に多くかかわり、「復興の狭間で~神戸 まちづくりの教訓」で2012年度芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門優秀賞。戦後も北朝鮮に残る日本人遺骨、日本に残る北朝鮮人遺骨を取り上げた「空白の68年~日朝両国に眠る遺骨~」で2013年度ギャラクシー賞報道活動部門優秀賞など。

編集 前嶌 健治

東京都出身。株式会社ギトリ代表。ドキュメンタリーやドラマ、バラエティまで様々なジャンルを編集。主な作品『氷の花火 山口小夜子』(15・文化庁大賞)『撮影監督ハリー三村のヒロシマ』(16・国際エミー賞)『ユーリー・ノルシュテインの、話の話。』(17・ATP優秀賞)『爆走風塵 』(17・衛星放送協会・最優秀賞)『ラップと知事選 』(18・ATP奨励賞)『バレエの王子になる!』(19・ギャラクシー賞・NYフェス銅賞他)『ダンシングホームレス』(20・座・高円寺大賞)『花子と先生の18年 ~人生を変えた犬~ 』(20)

音楽 渡邊 崇

1976年広島県生まれ。第37回日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞した『舟を編む』、ベルリン国際映画祭で特別表彰を受けた『663114』をはじめ、『オケ老人』『湯を沸かすほどの熱い愛』『帝一の國』『浅田家!』など、数多くの映画音楽を担当。またCM音楽も多数手がける一方で、室内楽コンサート用に楽曲を書き下ろすなど、幅広い活動で知られている。その他にも携わった映画がカンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭など多くの映画祭で上映されている。現在、大阪音楽大学特任教授。

撮影
熊谷 均/前川 光生/西田 豊
音楽助手
中原 実優
オンラインエディター
中田 勇一郎
効果・整音
高木 創
助監督・ビジュアル作成
鈴木 響
協力
藤田 貴久/朝日放送テレビ/テレビ東京
助成
文化庁文化芸術振興費補助金
(映画創造活動支援事業)
製作・配給
日本電波ニュース社 
2021年/日本/カラー/115分

劇場情報

8月28日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー!

9月4日(土)より
【名古屋】シネマスコーレ
9月11日(土)より
【大阪】第七藝術劇場

そのほか全国順次公開

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